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国道257号線を、岐阜県中津川市から南下して1時間ちょっと、設楽町の役場がある田口という集落に関谷醸造株式会社はあります。国道に面していて、大きな蓬莱泉の3D看板があるので、とても分かりやすいです。
写真は、小売と事務が入っている建物で、後ろの背の高い建物が実際にお酒を造っている蔵になります。
早速、関谷さんに蔵を案内していただきました。 |
右から2番目の白衣の方が関谷さん。後ろは精米機です。現在多くの蔵が、精米作業を業者任せにしている中、関谷醸造鰍ヘ精米にとても真剣に取り組んでいます。
ちょうど徳島産の山田錦を精米しているところで、コンピューター制御で、現在48.6%まで精米したところですと、精米中の酒米を見せていただきました。 |
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山田錦が高精白に向いているのは、その心白の位置が中央よりで、形が点状や線状になっているからだそうです。左の写真では見ずらいですが、透明感のある米の中心あたりに、白色の芯が見えます。この白色の芯(心白)が、良質な米でんぷんの塊だそうです。
削られた米カスは業者に売るそうですが、そのカスを使って工場でパック酒を造るそうです。どこのメーカーかは教えてくれないそうですが。 |
精米しているエリアの外に、無造作に置いてある丸い物に目が止まり、訪ねてみると、精米機の中にある研磨部分でした。表面はザラザラで、ココの上を米が通り、削れて小さくなるようです。摩擦熱で米が温まり、乾燥して割れてしまわないように、精米機の中に循環する米を冷却する部分もあるそうです。 |
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続いて、精米した米を保管・洗米するエリアを見せていただきました。蔵内は清潔第一!店長も白衣を着て、頭にはキャップをかぶっています。
精米したお米は、多少乾燥しているので、コンピューター制御で加湿を行いながら保管し、必要な分量だけを次の工程に送ることが出来るように、これまたコンピューター制御のパイプラインが敷設されていました。昔ながらの、蔵人が米を運んでいる姿はありませんが、蔵人が運んだから酒が旨くなる訳ではないと言う、酒質に直接関わらない工程を徹底して機械化する姿勢が、ここでもとてもよく分かりました。 |
洗米・浸漬工程は、特注の洗米・浸漬機で行っていたので、写真撮影はしていません。ただ、効率的に沢山の酒米に、限定吸水を行える凄いシステムでした(もっと特別なお酒を造る用の部屋が別にあるらしいです)。
右は蒸し器です。ベルトコンベアを使う連続式蒸米機では、理想の蒸米が出来ないと、甑を使って米を蒸しています。このあと蒸した米を放冷機に入れる作業も合理的に機械化されています。 |
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左は蒸し器を上から見た写真。蒸す前の、洗いたての米です。なんだか神々しさまで感じるのは私だけ?ちなみにこの米、「空」になるそうです。御安心下さい。触ってませんから・・・。蔵の中は、意外なほど若い蔵人が多く驚きました。若手育成に力を注ぐ関谷醸造鰍ネらではです。 |
右は、麹室から出てきたばかりの麹米。奥の白っぽい麹米と、手前のうっすら黄色がかった麹米と、2種類は区別できました(^^;)造るお酒によって麹の種類も、どのくらい時間をかけるかも違うので、色が違うんだよとのこと。
麹米を造る工程も機械化できる範囲は、極力機械化されていて、部屋の温度管理から、麹米の入っている箱を、部屋の上下の温度差に影響されないように動かしたりする作業も、肉体労働系の工程はほとんど機械化されていました。
ただ、機械化したからといって、工場で造るような日本酒とは違って、より良いお酒を造る為に、職人が良く見極めて、次の工程に細かい指示を出し、その結果を次回の為にフィードバックすることが大事だと、情熱的に話しておられました。 |
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左は酒母造りの工程です。ここでも若い蔵人さんが働いていました。ちょうど櫂で酒母を混ぜているところでした。酒母は蒸米と麹米と仕込み水の中に酵母を混ぜたものです。ちょっと香りを嗅がせてもらったのですが、すでに良い香りです。
麹は酒米のデンプン質を糖分に変え、酵母はその糖分を食べて、アルコールと二酸化炭素と熱を出します。酵母の密度が非常に高くなるまで約2週間かけるそうです。 |
右は6600L の醪(もろみ)タンクです。先ほどの酒母と麹米と蒸米に仕込み水が加わり、醪がが仕込まれます。ずいぶん量が少ないですが、いっぺんに全部入れて仕込むのではなく、3回に分けて仕込むからです。1回目を初添、2回目を仲添、最後を留添といいます。右は1回目なので初添です。3回に分ける事によって、雑菌が増殖するリスク少なく、麹や酵母に余分な負荷をかけることなく働いてもらうことが出来ます。 |
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左は3回目の留添のあと、所定の醪期間を終えて、酵母の活動も一段落付いて、落ち着いた状態です。再活動時期にはふたギリギリまで液面が上がっていましたが、ちょっと落ち着いて下がっています。仕込み水を使ってタンクのヘリに付いた醪を落としているところです。ちなみにこのタンクの中、二酸化炭素が充満しているので、顔を突っ込むと即死できるそうです。でも「空」の醪の中なら突っ込んでみたいと思う人はいるのでは?(いないか) |
醪は上槽によってお酒と酒の粕に分けられます。水圧でゆっくり圧を加え、あと1割搾れるかな〜っという所で、搾るのをやめるそうです。それ以上搾ると雑味などが出て、味が落ちるようです。
一番驚いたのは、レギュラーの蓬莱泉であろうが、「空」や「吟」や「品評会に出すお酒」であろうが、全て同じこの機械で搾っているそうです。この機械のみならず、全ての工程で、全ての酒が、同じライン・同じ手間で造られています。これは驚くべきことです。 |
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左は粗くはがした酒の粕です。蓬莱泉の酒粕ならきっと美味しいに違いない。昔はその処理に困っていたらしいのですが、今は結構な高値で、漬物屋さんが買ってくれるそうです。蓬莱泉の酒粕で漬けた漬物ならうまいに違いない。これは放って置くと、わずかに残っている酵母の働きで、柔かくなるそうです。 |
右は瓶詰めの工程です。メンバーの1人が、「おれもビンになりたいな〜」と言っていましたが、いいかも。上向いてアーンって。 |
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蔵の出口で記念撮影。
関谷さんは、品評会用に手造りで特別な仕込みを行うことはしないと言います。少量の超高品質なお酒を造っても、いったいどれだけの人の口に入るのだろうかと。仕事の合理化、機械化を進めた結果、本醸造酒から、純米大吟醸まで、同じラインで、同じ手間で造るようになり、その結果、ランクの低いお酒の品質まで、飛躍的に向上したと言います。なるほど、普段飲んでいる別撰蓬莱泉も、うまい訳だ。 |
実はこの後、岐阜県川辺町の「しいたけブラザーズ」を見学し、夜には関谷醸造鰍フお酒を飲んだのですが、感慨深いものがありました。本当にきれいな、うまい酒です。
正直、ワインに比べて、心の何処かで日本酒を軽んじていた部分があったことを告白いたします。造りの工程、蔵人の姿勢、精神、情熱、酒質、どれをとっても世界に類を見ない、素晴らしい文化、素晴らしい酒だと感じました。申し訳ございませんでした。猛反省して、今後働いていこうと決心いたしました。(文責 坂本雄一)
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